関係の類似性の具体例

 Koppeさんの疑問に答えるために、前回ご紹介した「認知文法の新展開(早瀬尚子、堀田優子 共著)」の引用文の続きをご紹介させていただきます。

----以下引用----------
 この3つの類似性を、言語のレベルで説明してみよう。たとえば、(31)にあげた2つの文で代表されている事象を比べ、どちらが「より似ているペアか」と尋ねてみると、おそらく圧倒的に(31b)のペアに軍配が上がると思われる。
 (31)
   a.「太郎が次郎を叩いた」 vs. 「太郎が次郎を蹴った」
   b.「太郎が次郎を撫でた」 vs. 「次郎が太郎を撫でた」
(31a)では、どちらも太郎が動作主(Agent)で次郎が被動作主(Patient)であり、参与者役割がどちらの事態でも同じ、つまり(30a)に相当する属性レベルでの同一性が見られる。一方(31b)では、太郎が動作主の場合と被動作主の場合とがあり、事態に関わる参与者性は異なる(つまり同一性はない)が、参与者間に成立する「撫でる」という関係は同一であり、(30b)に相当する、関係の強い類似性が見られる。ここで(31a)よりも(31b)のほうがペアとしての類似性が強く感じられるという判断結果が示しているのは、個々の参与者がたとえ異なっていたとしても、その参与者間に見られる関係になにかしら類似性がみとめられれば、それは類推を促進する力となる、と言うことである。つまり、類推において重要なのは、関係レベルでの類似性なのである。
 この<太郎が次郎を撫でた>と<次郎が太郎を撫でた>という関係レベルの類似性をさらに抽象化したものが<XがYを撫でた>という高次レベルの関係であり、これが(30c)にあたる。これは、個々の関係事例に見られた特殊性を取り除いた、それぞれの例に共通する構造を抽出したものであり、つまりはスキーマとなる。ひとたびスキーマが抽出されれば、それは新たな事例にであったときにも、関係の類似性を見だせるかぎりにおいて容易に想起されて用いられる。
----引用終了----------

いかがでしょうか、これで回答になりましたでしょうか?

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