類推と類似性

 では、逆に、「類似関係」というものがカテゴリの名称であると考えて見ましょう。そこにはどんな成員が考えられるのでしょうか? .....。 となりませんか? そうなのです、どのような成員があるか具体的に挙げられないですよね。
 これは、カテゴリというものが類似性のあるものの集合の名称であることからきています。したがって、その観点から考えると、「類似」やそれに相当する概念(言葉)に「関係」をつけることはおかしいということになります。
 そこで、この類似という概念をもう少し紐解いてみます。「認知文法の新展開(早瀬尚子、堀田優子 共著)」に次のようなことが述べられています。

----以下引用----------
類推とは、あるものを別のものにみたてることである。類推は日常のカテゴリー化に必要な能力であり、抽象的な新しい概念を認識・理解する助けとなる。
  ~ 途中省略 ~
 類似性という概念が、カテゴリーの成員の認定に際し重要なものであることは、疑いようもない。しかし、この類似という概念は、実は不明瞭である。というのも、どんなものであっても、何かしらどこか似ている些細なところを探し出せるからである。では、カテゴリー認定において要求される類似性とは、どのようなタイプのものなのだろうか。
 認知科学における類推研究であるHolyoak and Thagard(1995)に従えば、類推が起こるために本質的に必要とされる類似性とは、次の3つである(Holyoak and Thagard 1995,Ch.3)
(30)類推に関わる類似性:
 a.対象のもつ属性レベルの類似性
 b.対象が関わる関係の類似性(一次的関係)
 c.一次的関係どうしに見られる高次の類似性(システム・レベル)
このうち類推において重要視されるのは(30a)の「属性レベルの類似性」よりも、(30b)の「関係の類似性」もしくは(30c)の「高次レベルの類似性」である。つまり、属性そのものより関係の類似性が、類推を促進する動機となるとされている。
----引用終了----------

 このことを逆に捉えると、類推を促進するための思考過程において「関係」という概念が必要であると言えるのではないでしょうか?
(続きは次回へ)

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